「おかあさんといっしょ」スタジオライブ・コレクション 〜うたをあつめて〜 ライナーノーツ

「おかあさんといっしょ」番組プロデューサー・古屋光昭さんによる「スタジオライブ」の楽曲を解説したライナーノーツをご紹介します!
曲を思い浮かべながら、ひとつひとつの楽曲に込められた想いを読み解いてみてください!

夢のなか

もともとは「母と子のテレビ絵本」(1990~1996)のオープニングテーマ。歌っていたのは当時の「おかあさんといっしょ」のお兄さん・お姉さんである坂田おさむさんと神崎ゆう子さん。この番組は「おかあさん~」と同じ部署で制作しており、スタッフも重複(私もこの番組を担当)、兄弟番組のような関係でした。「~テレビ絵本」は1996年に放送が終了、「夢のなか」がこのまま埋もれていってしまうのはあまりにもったいないと思い、「おかあさん~」の1998年11月の「月のうた」に採用し、その後も「おかあさん~」で歌い継いでいます。なお、「~テレビ絵本」は2003年に「てれび絵本」としてリニューアル復活しますが、「夢のなか」は使われていません。

星に願いを

1940年のディズニー映画「ピノキオ」の主題歌。スタンダードソングとしてもあまりにも有名。数々のアーティストにカバーされています。「おかあさんといっしょ」でも「ファミリーコンサート」等で何度か歌ったことがあり、その際に山川啓介さんに日本語詞をお願いしました。山川啓介さんは「聖母たちのララバイ」「時間よ止まれ」等の大ヒット曲の作詞を手掛けた作詞家ですが、「おかあさん~」では本名の井出隆夫さん名義で「にこにこ、ぷん」の脚本や、数多くの番組オリジナル曲の作詞をしてくださいました。この「星に願いを」も井出さんらしい言葉選びが随所に光っています。

見上げてごらん夜の星を

1960年の同名のミュージカルを1963年に坂本九さんが再演、シングルレコード化、映画化され、国民的な歌謡曲になっていきます。作詞は永六輔さん、作曲はいずみたくさん、オリジナルレコードの編曲は、作曲家、ジャズピアニストとして有名な渋谷毅さん。渋谷さんは「おかあさんといっしょ」でも「こんなこいるかな」「ちょんまげマーチ」「あ・い・うー」、最近では「ぎゅーっ はかせ」等多くの曲を作っています。ちなみに前述の「夢のなか」も。ゆういちろうお兄さんには是非坂本九さんの歌を歌ってほしかったこと、そしてコロナ禍の状況だからこそ、この歌を選曲しました。

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グリーングリーン

1963年にアメリカのニュー・クリスティ・ミンストレルズが発表。日本では1967年に「みんなのうた」で放送、その後に教科書に載ったり、CM曲として使われたりと、人気が高い歌。「おかあさんといっしょ」でも折に触れ放送しています。教科書といえば、自分が子どもの頃には「パフ」が教科書に載っており、好きな歌の一つでした。「おかあさん」を担当するようになって、番組に合う外国曲を探していた際に「パフ」と再会し、自分の担当回にはよく「パフ」を選曲していました。教科書も歌と出会うきっかけの1つなのだと思います。

あしたははれる

「おかあさんといっしょ」の1999年3月の月の歌。作詞作曲は坂田修さん。
「悲しくて泣きたくなったとき、思い出してほしい僕らのことを~」と、この歌のデモテープの出だしを聞いた時に、番組やお兄さん・お姉さんからのメッセージを歌っているように感じられ、当時のお兄さん・お姉さん(速水けんたろうさん・茂森あゆみさん)の番組卒業に合わせた月の歌にすることを即決しました。また、東日本大震災の影響で子どもを集めた収録が出来なかった際に、子どものいないお兄さん・お姉さんだけのスタジオで、被災地の子どもたちに向けて最初に歌ったのも、この歌です。

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風をあつめて

「はっぴいえんど」のアルバム「風街ろまん」(1971年)に収録されている名曲。「はっぴいえんど」のメンバーは、細野晴臣さん、大瀧詠一さん、松本隆さん、鈴木茂さん。自分たちの世代はこの方たちの音楽に育てられており、以前から「はっぴいえんど」の歌を是非「おかあさんといっしょ」で歌ってみたいと思っていて、この機会に選曲。ちなみに、大瀧詠一さんの「空飛ぶくじら」を当時のお兄さん・坂田おさむさんに「おかあさん~」で歌ってもらったこともあります。

北風小僧の寒太郎

井出隆夫さん作詞、福田和禾子さん作曲。福田さんは「おかあさんといっしょ」だけでなく、多くの子ども番組に沢山の名曲を残した作曲家です。1974年の「みんなのうた」で堺正章さんが歌い、月岡貞夫さんのアニメーションで知られている歌。でも、この歌は1972年に「おかあさん~」で生まれた歌なのです。「寒太郎」は「おかあさん→みんなのうた」ですが、逆パターンの「みんなのうた→おかあさん」の歌も数多くあります。この2番組、かつては担当者が重なることも多く、自分が担当して作った歌を、番組が変わっても持って回った(異動先の番組でまた歌う)ことに起因しているようです。

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にじのむこうに

「おかあさんといっしょ」の1996年4月の歌。坂田修さんは沢山の楽曲を「おかあさん~」に書いてくださっていますが、「にじのむこうに」が転換点だと考えています。 "大人の歌"は、一般的には歌い手=歌の主体と歌の内容がつながったものとして捉えられ、メッセージ性の強い歌ほどその傾向が強くなります。逆に子どもの歌、童謡や唱歌の多くは、歌の主体と歌の内容が分離されています(だからこそ、歌い手が変わっても歌い継がれやすいのですが)。この観点で見ると、「にじのむこうに」は、「お兄さんお姉さんが歌う子どもに向けたメッセージソング」というそれまで番組になかった新しいタイプの歌であり、以後、修さんはこのタイプの楽曲を数多く書かれるようになっていきます。(※「あしたははれる」参照) ちなみに修さん作ではありませんが、「ぼよよん行進曲」もこのタイプだと思います。

にじ

新沢としひこさん作詞、中川ひろたかさん作曲。1990年に親子向けバンド「トラや帽子店」が発表し、その後も幼稚園や保育園で定番曲として親しまれてきた歌。「おかあさんといっしょ」で歌ったのは初めてですが、シンプルな言葉が心にしみる名曲です。

そよかぜスニーカー

「おかあさんといっしょ」の2017年4月の歌。作詞は井出隆夫さん、作曲は元歌のお兄さんの林アキラさん。今回はピアノアレンジを林アキラさんにお願いし、ゆういちろうお兄さん・あつこお姉さんに、コンビの初めての月の歌を作曲家ご本人(かつ先輩の歌のお兄さん)のピアノ演奏で歌ってもらいたく、選曲しました。

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雪はこどもに降ってくる

山川啓介さんが由紀さおりさん、安田祥子さんのために書いた歌。1996年に「おかあさんといっしょ」のクリスマス特番「プレゼントは歌うピザ」を制作した時に、脚本の井出隆夫さん(山川さん)がこの歌を教えてくれました。渋谷毅さんの曲を、ジャズピアニストの菊池ひみこさんが素敵にアレンジしています。

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はるのかぜ

坂田修さんが初めて「おかあさんといっしょ」に提供した楽曲。この楽曲提供がきっかけとなってお兄さんのオーディションを受けることになり、お兄さんとなり、そして卒業後も番組に歌を提供し続けるという不思議な縁の始まりの曲です。今回ピアノアレンジの打合せの際に、この話を林アキラさんとしていたら、「この歌を始めて歌ったお兄さんは、僕」と言われ、これまた不思議な縁を感じました。

エーデルワイス

1959年のミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」(1965年映画化)の中の劇中歌。自分は小さい頃観た映画、そして教科書に載っている歌として出会いました。ちなみに教科書に載った日本語訳は何種類かあるようで、人によって覚えている歌詞も違うようです。劇中では男性が歌っていますが、自分の中では母がよく歌っていた記憶があり、女性に歌ってもらいたく、あつこお姉さんソロでお願いしました。

春の唄

1937年に「国民歌謡」の1曲として発表された歌。「国民歌謡」はNHKの前身の1つである「大阪中央放送局」が企画した流行歌を普及させようというラジオ番組。考えてみると「みんなのうた」や「おかあさん」もこの流れ(番組による歌の普及)の遥か末裔であるように思います。私はこの歌をシンガーのCHAKAさんのライブCDで知り、いつか番組で取り上げてみたいと思っていました。歌の誕生にもいろいろな形があり、歌を知るきっかけも様々あるのだと思います。

花は咲く

NHKが東日本大震災の復興支援ソングとして2012年3月から放送。震災10年の年、入れるべき歌として選曲しました。ゆういちろうお兄さんもこの歌を歌うことをとても希望していて、まさに「心を込めて」歌ってくれています。

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明日

ひょっこりひょうたん島

1964年から1969年にNHKで放送され大ヒットした人形劇「ひょっこりひょうたん島」の主題歌。2003年のモーニング娘。のカバーバージョンで知った方も多いのでは。歌詞には一言も「明日」という単語は出てきませんが、前向きで不屈の精神をうたった今なお力強い「明日」の歌であると思います。作詞の井上ひさしさん、山元護久さん、作曲の宇野誠一郎さんは、こども番組の大先輩。先達への敬意も込めて選曲しました。また、この歌だけは振付をつけており、かつ歌い方もオリジナルの前川陽子さんに負けないくらいはっちゃけて歌って、とお兄さんお姉さんに頑張ってもらいました。4人の歌とダンス、見所です。

トゥモロー

ミュージカル「アニー」から。この歌で見せるあつこお姉さんの熱唱は、普段の番組のほんわかして優しいあつこお姉さんとは思えないほどの力強さとたくましさを感じさせます。

あしたのあしたのまたあした

誠お兄さん、杏月お姉さんの試練の歌。この歌のように、振付もセリフもなく表情だけで「歌の世界」を表現するのは、演者にとっては酷な要求です。スタジオライブでは振りをつけて激しく踊ったり、身体能力をアピールするのではなく、そっと揺れたりリズムをとったり、表情で歌の世界を表現することをお願いし、誠お兄さん、杏月お姉さんは見事にその課題をクリアしてくれました。

にじいろ

比較的最近のJ-POPで、番組に合う歌を探していた時に思いついたのが、絢香さんの 「にじいろ」です。この歌の「これからはじまる あなたの物語」は、誰が誰に向けて歌っているのでしょうか? お兄さんお姉さんが(もしくは親が)子どもの未来に向かって語り掛ける歌として選曲したのですが、聞く人それぞれの解釈で楽しんで頂ければ。

あしたてんきにな~れ!

2009年から2017年、「おかあさんといっしょ」のエンディングテーマとして使われていた歌。この歌を作った時、エンディングとして毎日流れる歌なので、これを聞いて育った子どもたちが大人になり何かしんどいことがあっても、ふと「トンネルのむこうは あおぞらいっぱい~」と口ずさんでくれたら、という思いがありました。理屈でなく、無条件に明日を信じられるようになったらいいなと。
スタジオライブで放送された時には、「子育ての一番つらい時期、お兄さんお姉さんやムテ吉たちに励まされたのを思い出した」という声を多く頂きました。これからも「おかあさんといっしょ」が「歌」に出会うきっかけになったり、微力ながらも親子の力になったりすれば、担当者としてこんなに嬉しいことはありません。

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